君がいた夏




それは、彼にとっては永遠で、彼女にとっては一瞬の思い出。
倦むべき永き生の中では稀少な出会いであり、
限りある生の中ではありふれた出会いに過ぎない。
それでも。
互いにとって光輝く時間であったことは変わりなく・・・それぞれの胸の中に宿り続 ける。




夏が来るたびに、彼女は切ない気持ちになる。
雨の日は、いい。
苦しいのは、からりと晴れた、青い空を見ること。
どこまでも青いその色は時折涙を誘う。
胸を掠めるこの切なさはどこから来るのだろう。
覚えているのは抜けるように青い夏の空の色。
緑の平原。
そして、約束の言葉。


「また、どこかで会える?」
そう言われて頷いた。
それは、当てのない約束。
瞬きの合間にきっと消えてゆく存在だというのに、彼は頷いた。
否、置いてゆかれる自分にこそ、約束が必要なのだ。
瞼を閉じれば眼裏に蘇る鮮やかな光景。
抜けるように青い空の色。
緑の平原。
そして離れゆく手のひら。




遠い夢に似た思い出。
遠い夢に似た記憶。


君がいた夏。


そしていつか迎える、君のいる夏。












こちらも、『Close To The Night』さまのサイト開設一周年記念フリー小説をいただいてきましたものです!!

『雨の日はいい。でも夏の青空は、苦しい・・・・・・』
ああ、見事に千尋の心情を描ききっていて、短いフレーズなんですけど、何度も読み返さずにはいられませんでした。
こういう感性って、まきさまならではだなぁといつもためいきまじりに感じております。(ほぅっと)

そして、置いてゆかれるハクにこそ、「約束は必要だった」、という切り口。
はっとしました。目を覚まされる思いです。。。
その通りですよね。
何かすがるものがないと、誰だって生きてゆけませんものね。
がーんと後頭部を打たれて、頭の中がすっきりとゼロになった気分でした。

ひとつの「約束」をめぐるふたりの心情のからみあいが、せつせつと文面から滲んできます。。

そして、ラストの一文で、ほっと救われる気持ちに。。。

このシンプルな、でもさらりと前向きな一節、すごく好きなんです。



素敵なお話を2つもこころよくくださいましたまきさま。
ほんとうにありがとうございました!!
こんなに素敵なものを飾らせていただけて、幸せです。(=^^=)

まきさまのサイト『Close To The Night』へは、リンク部屋から行けますので、ぜひ♪





♪この壁紙は自然いっぱいの素材集さまよりいただきました♪



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