「ずっと一緒に」 

    
今、傍にこうしてハクがいる。
 
「あのね、、ハク、あのね、、」と世間話をしはじめたものの、その綺麗な瞳で
じっと見つめられると、見入ってしまい、何を話していたかコロッと忘れてしまう。

するとハクはくすくすと笑って、「なんだい?千尋?話しが途切れちゃったよ?」
とからかい出す。その笑顔も、そう言いながら、繋いだままの優しい手の感触も、
全部全部好きだと思う。ただ傍にいれるだけで、舞いあがりたくなるくらいに
嬉しくてたまらない。

今日も青く広がる空、気持ちよそよぐ秋風の中、近所の海浜記念公園で緑一杯の草むらに
ビニールマットを広げて、寝転び、持ちこんだバスケットからストアで買った、わらび餅など
取り出してパクつく。

「この黒蜜美味しいね。これはいい。。」と和菓子にはうるさいハクは、千尋の
大好物なオススメ品を口にして感心しきりの様子。千尋はフフフ・・と微笑んで
「でしょ〜?こういうのなら油屋とかに出すと大評判になったのにね。」と言う。
「じゃ、戻ってまた働くかい?」とハク。目は少しおどけた様子。

千尋はぶるぶる首を振る。それを見て、ふふっと笑うハク。

ハクは優しく微笑みながら、そっとその手を千尋の頬にのばしてくる。
そして「わたしも戻る気は無いよ。」と言って、「せっかく千尋とこうして会えたのだから。」
とまっすぐにその綺麗な瞳で見つめてくる。千尋は嬉しそうにその頬にかけられた手を握る。


ザ・・・  ザザザ・・・  ザザ・・・

遠くには、気持ちの良い波の音が響く。「不思議だね、こうしてると油屋の従業員部屋で寝てる気分だけど、
今は・・・、こんなに日が差してて明るくて、傍には千尋がいる。」と、ハク。

「うん、ずっとね。これからもよろしくね。」と返す千尋。


ぽかぽかした日差しの中、寝転がったまま、お互いを愛しそうに見やる。千尋は頭をハクの腕枕に
乗せていて、気持ちよさそうな顔。

「千尋、今朝は疲れたかい?」とハク。

千尋はふふっと微笑み、「うん、少しね。」と返す。「でも楽しかったよ。これからずっと一緒だもん。
あたしの荷物はそんなに無いし、あとは二人で一緒に買ったお茶碗とかお皿でしょー、あと小さな家具
いろいろね。一緒に部屋で並べていくうちに、ああ、今日から、ハクとずっと一緒なんだ〜って嬉しかった。」
と、にこにこと言う。

ハクもにこにこしながら、「そう。。でも千尋がもっと何か他のもので欲しいのがあったら、まじないで
すぐに用意してあげるよ。そなたのためなら、何でも、すぐに。」と優しく語り掛けてくる。
 

それはだめだよ〜、おまじないがもったいないよ、と笑って遠慮する千尋。
海風がふわり・・とそのポニーテールの髪を数本まいあがらせる。ハクは思わず、その髪から流れてくる
花のような気持ちの良い薫りに目を細めた。


「・・・そなたは日に日に綺麗になっていくね。」とハクがつぶやく。そしてその綺麗な指先で、千尋の髪を数本
すくいあげては落として、撫で始める。「これからずっとそなたと一緒に暮らせて嬉しいし、すごく安心するよ。
本当は、千尋、そなたを昼も夜もずっとずっと傍に置いておきたいくらいだ。大学なんてところにやって、
他の男達の目には触れさせたくないよ。。。」としみじみ言い出す。


千尋はくすくすと笑って、「もしかしてヤキモチやいてくれてるの?あたし、全然美人じゃないし、もてないのに?」
と言っても、ハクは「いいや。そなたは可愛らしいのだよ、いつも。だからもてないわけがないじゃないか。」と
真面目な顔。

千尋はまた頬を赤らめる。が、またにっこりと、「でももうあたし、ハクの婚約者だもん。お父さんもやっと認めて
くれたし、あとは勉強頑張って大学卒業したら、ハクのお嫁さんになるだけだもん。」と明るく言う。
すると今度はハクが嬉しそうに微笑んで、腕を千尋にスッと回し、腕の中にぎゅうっと千尋を閉じ込めた。

 

そっとお互い唇を重ねあう二人の、それぞれのポケットからはチリン・・という可愛い音が。 

それは二人の、これから一緒に暮らすアパートの鍵につけた鈴の音。ペアでそろえた鈴付きのキーホルダー。
鈴がチリン・・チリン・・・と、二人がぎゅうっとくっつく度に揺れて鳴る。

「もお〜。。ハク、だめだよ。あたし達、今、外にいるんだから〜。。」と千尋が赤い顔をして腕から逃げる。
と、「じゃあ、アパートの中だったらいいの?」とこれまた真面目に聞くハク。

「〜〜〜〜〜・・・・ま、、まだダメッ。ハクは、ちゃんとお父さんに約束したでしょう?
結婚するまで、ちゃんと真面目に交際しますから、って。」と千尋はより一層真っ赤な顔。

こつん・・と額が優しく重なる。そしてハクが、ふ〜〜〜っ・・・と息を深くつく音が。

「・・・・そうだね。。。でもこれって、わたしには今までですごく厳しい修行になるかもしれないな。。」と
少し頬を赤くして、憂いのこもった瞳で千尋を見つめる。


「そ、、そうよ。神様は人間を守らなくちゃ。。」ともごもごとごまかす千尋。

「・・・神でも、人間を守るだけじゃなくて、恋することもあるのだけどね。」と千尋に甘く囁くハク。


そして、「ずっと本当は、千尋をわたしの腕の中に・・」とまで言い出す正直なハクに、千尋はあわわわわ・・と
その口を手でふさぐ。「もー、神様は清らかな心でないとだめなのよ。煩悩に取り付かれたらダメっ!」と
叱り出す。ハクは口を優しくふさがれつつもくすくすと笑い出す。


「千尋、そなたはたまにわたしの"母親"にもなっちゃうんだね。恋人でもあって、将来の妻でもあって、
そしてこうだから、そなたは本当にわたしにとっては全てだ。千尋、そなたを全身全霊で愛してるよ。」

さらりとすごい台詞を言い出すハクに、もう千尋は脳から湯気が出そうに真っ赤になっている。

そしてもごもごと「わ、、わたしもハクのこと大好き・・よ・・」とハクに抱きしめられつつ、その耳元に囁き返した。



それからひなぎくなど可愛らしい花々が咲き乱れる野原で、二人のんびりと休んで、またゆっくりと歩いて帰る。


甘える千尋に腕を組まれて、嬉しそうに微笑むハク。

二人、今日から帰る道は一緒。これからはずっと一緒。 



*おしまい*









『あの欄干の上で』さまの、20000hit記念フリー小説をいただいてきました!!

甘いハクセンラブストーリーの第一人者といえば、逢瀬千鳥さまですよねっ!!!!
今回も〜〜幸せな幸せな二人のひとこまを描いてくださいました(喜v)
ああ、こんなあったかな結末が二人に訪れることを祈ってやみません〜〜〜

なお、このSSは千鳥さまの「満点の星の下、黄金色のしずくの下」シリーズを受けての作品です。
シリーズ全部を読みたい方はぜひ千鳥さまのサイトへ!!

逢瀬千鳥さま、ほんとうにありがとうございました!!

逢瀬千鳥さまのサイト『あの欄干の上で』へは、リンク部屋から行けますので、ぜひ♪





♪この壁紙はさまよりいただきました♪



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