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<<<夜伽ばなし 其の一 "竜宮">>> 第一夜
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でっけぇ亀に連れられて浜に戻ってきた若者はな。
自分はこの村の者やと言い張ったんや。
せやけどな。
この村のもん、だぁれもそげな男のこと、知らん。
あ、いや、村で一番年かさのばあさまが
むかぁし、この村であったとかいう"神隠し"の話を思い出しての。
突然おらんようになった息子を
待ち続け、待ち続けして死んだ、いう夫婦の墓に
その若者を連れていったそうな。
その男な、墓の前でしばらく泣いておったそうや。
でな、ごっつう上等そうな蒔絵の筥(はこ)、懐から取り出してな。
それを開けたんや。
ほしたら、そん中から白い煙が出てな、
若者はすっかり皺白髪のじいさまになってしもうたんやと。
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