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ここまで話を聞いて、ハクはややほっとしていた。 「ね、これでわかったよね、千尋? その男はわたしではないと」 が、千尋はうっとりと頬を赤らめていて。 「うわぁ、素敵。琵琶が恋を取り持つなんて。」 「そう? ちょっと恥ずかしいのだけど」 「千尋、わたしの話を・・・・」 「自分が好きになった人が、実は前から自分のこと好きだったなんて、物語みたいだね」 「うふふ。わたしも、そう思ったわ」 いつの間にやら、話の興味の中心はすっかり女同士の恋愛談義になっているもようで。 男が割り込みにくい盛り上がり方に。 「あのね、千尋。ここで大切なのは、その男が龍神ではなかった、っていうことで」 それにもめげず、懸命に千尋に話をもちかけようとするのだが。 「あ、その話はあとでね、ハク。-------いいなぁ。そんな素敵な両思い、わたしもしてみたい」 「お相手は?」 「う〜〜〜〜ん。前の学校にかっこいい男の子とかっていたけど、ちょっと違うかなぁ」 相手なら、ほらほら、目の前に、、、と、言いたいのはやまやまの龍の子。 あとでね、と軽くあしらわれてしまっては、ぐうの音も出ず。 きゃあきゃあと楽しげな娘達を横目に拗ねるしかなく。 少々不機嫌を顔に出しつつ、黙りこんでいると、やっと、千尋がそれに気づいたのか、声をかけた。 「あ、ねえ、ハク」 やれやれ、ようやく話を聞いてくれる気になったのかとハクが顔をあげると。 「ハクは、そういう両思いとかって、なったことある?」 ・・・・・・・・・・・・。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。 「あっ! ごめん、悪いこと聞いちゃった????」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。 哀れな龍神は返す言葉もなかった・・・・・・。 * * * * * |