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「北の方、って何?」 千尋が首をかしげるので。 ハクが受けて、説明してやる。 「ああ。『正妻』、という意味だよ」 「ふうん。それで、ハクは、お姫様を『きたのかた』に、してあげたの?」 「だから!!! その男はわたしではないと、言っているだろう!!!」 「そうなの?」 「千尋は! わたしのことが、信じられないのか?」 「信じる・・・って。わたし別に何も疑ったりしてないよ?」 かなり熱くなっている龍神の少年と、きょとんとしている人の娘のちょっとずれたやりとりを。 小袿姿の少女は、くすくす笑いながら心底おもしろそうに眺めている。 いい加減にしてほしい。 白い龍の細工のある琵琶の撥? ご丁寧にも、瞳に翡翠の象嵌だなどと。 まぎらわしいことを。 そこにもって、追い討ちをかけるように、水琴窟の『想夫恋』。 千尋の身近にいる、白い龍とか、水神とかといえば、自分しかいないのだ。 案の定、ごっちゃにしているではないか。 不本意千万な、龍の子。 と。目をきらきらさせている、人の子。 「そして雨を降らせて都の人達を助けてあげるなんて!! かっこいいよー!!!」 「あのね、千尋。誓ってわたしは、妻帯したことなど、ないよ?」 「それに、水琴窟で音楽を演奏するなんて、すごいね、ハク。さすがだね」 「ちひ。。。」 「こんどわたしにも聞かせてね」 「・・・・千尋・・・・人の話を、聞いて、、、、いる?」 「うん!」 むなしい釈明を続ける龍神の子は、心中かなり情けなかった・・・・・・。 * * * * * |