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<<< 胡蝶 (7) >>> 

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「北の方、って何?」

千尋が首をかしげるので。
ハクが受けて、説明してやる。

「ああ。『正妻』、という意味だよ」

「ふうん。それで、ハクは、お姫様を『きたのかた』に、してあげたの?」

「だから!!! その男はわたしではないと、言っているだろう!!!」

「そうなの?」

「千尋は! わたしのことが、信じられないのか?」

「信じる・・・って。わたし別に何も疑ったりしてないよ?」




かなり熱くなっている龍神の少年と、きょとんとしている人の娘のちょっとずれたやりとりを。
小袿姿の少女は、くすくす笑いながら心底おもしろそうに眺めている。










いい加減にしてほしい。


白い龍の細工のある琵琶の撥?
ご丁寧にも、瞳に翡翠の象嵌だなどと。
まぎらわしいことを。

そこにもって、追い討ちをかけるように、水琴窟の『想夫恋』。



千尋の身近にいる、白い龍とか、水神とかといえば、自分しかいないのだ。
案の定、ごっちゃにしているではないか。





不本意千万な、龍の子。

と。目をきらきらさせている、人の子。




「そして雨を降らせて都の人達を助けてあげるなんて!! かっこいいよー!!!」

「あのね、千尋。誓ってわたしは、妻帯したことなど、ないよ?」

「それに、水琴窟で音楽を演奏するなんて、すごいね、ハク。さすがだね」

「ちひ。。。」

「こんどわたしにも聞かせてね」

「・・・・千尋・・・・人の話を、聞いて、、、、いる?」

「うん!」



むなしい釈明を続ける龍神の子は、心中かなり情けなかった・・・・・・。



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♪この壁紙は薫風館さまよりいただきました。♪



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